不動産

「みなさん」ではない、あなたにふさわしい住宅ローンの選び方

「みなさん、年収のこれくらいまで借りられていますよ」
「みなさん、ほとんどの方がこの金利プランを選ばれています」

住宅ローンを検討する際に、市場の傾向を知ることは参考になります。
しかし、その “傾向” があなたに合うとは限りません。

人生で一番高い買い物と言われる住宅を持つ時に、「みんなが選んでいるから」という理由で決めるのは大丈夫でしょうか?

今回は、あなたに合った住宅ローンを利用するにあたって、考えるべきポイントを整理します。

自己資金はどう準備するか

住宅購入(建設)の計画においては、まず “予算” を立てます。

予算 = 自己資金 + 住宅ローン借入額

したがって、あなたが持っている金融資産のうち、どのくらいを自己資金にあてるかは重要です。

① 生活防衛資金には手を付けない

生活防衛資金について、ご存知ですか?
これは、人生において起きる不確実なこと(事故や失職、病気など)に備えてあらかじめ準備しておく資金です。
いざというとき、ためらいなくすみやかに引き出せるお金として、預金などで準備しておくことがすすめられます。
金額は、世帯の基本的な日常生活費(住宅費も含む)の6カ月~1年分が目安とされています。

生活防衛資金については手を付けず、大切なお守りとして別に確保しましょう。
この資金があるから、安心してお金が借りられると思ってください。

② 頭金と諸費用は分けて考える

住宅取得のための自己資金は、頭金と諸費用に分けられます。

〇 頭金

頭金は、住宅の物件価格に充当するものです。住宅ローンをいくら借りるかという金額に直結します。

住宅ローン借入額 = 住宅の購入(建設)の物件価格 - 頭金

もし、全期間固定のフラット35を検討している場合は、現在の制度内容では、頭金を物件価格の1割以上用意するかしないかで金利が異なってきますので、最低でも1割は準備することをおすすめします。

《参考:住宅ローン控除との向き合い方―逆ザヤ時代の終了―》

住宅ローン控除(住宅ローン減税制度)は、従来は [ 控除率≧ローン金利 ] であることが多く、控除期間中は最大限にそのメリットを活かそうという考え方が主流でした。
しかし、現在では、控除率が0.7%(令和8年~12年)となり、一般的にはローン金利がそれを上回る状況となっています。

したがって、借入額が大きければ大きいほど、利息負担は増えるということになります。
そこで、頭金についてどう考えるかは、手元資金をどう運用するか次第ということになります。頭金をいくらにするか検討する際のポイントは次のとおりです。

① 自分の物件へ適用される借入残高の上限の確認
どんな住宅であるか、新築か中古か、またその性能により細分化されているので、事前に必ず確認します。

② 実効性の壁を確認する
住宅ローン控除は「年末残高の0.7%」が計算上の上限ですが、実際には自分が支払っている所得税・住民税の額までしか控除されません。
しかも、まず所得税から控除され、控除できなかった分が翌年の住民税からとなりますが、その控除額は所得税の課税総所得金額等の5%(最高97,500円)の範囲内です。
つまり、借入残高×控除率の全額が適用されない場合があります。

自分の納税額で、実際にいくら税金が戻ってくるのか(実効控除額)をあらかじめシミュレーションします。

(例)計算はすべて概算で行っています。
年収600万円(手取り466万円 )の方の場合※2
・所得税:15万円
・住民税:31万円
住宅ローン借入残高 4,000万円の場合、4,000万円 × 0.7% = 控除可能額28万円
・所得税からの控除額:150,000円(全額控除)
・住民税からの控除額:97,500円(控除上限)
実際の控除額合計:247,500円(上限280,000円のうち、32,500円分は使い切れず切り捨て)

③ 頭金に入れない手元資金は、住宅ローン金利を上回る安定した運用が可能か検討する

④ 運用した手元資金は、住宅ローン金利が見直され、金利上昇した場合の繰上げ返済資金用にとっておけるか検討する

〇 諸費用

諸費用は、不動産の登記費用や不動産屋・銀行に支払う手数料などさまざまあります。
諸費用向けのローンを提供する金融機関もありますが、自己資金で賄う場合が多い印象です。
理由は2つあります。

  • 物件価格を超えるローン(諸費用まで借りる)は、金利高くなる場合がある。
  • 融資実行よりも先に支払いが必要になる費用がある。

諸費用についての物件ごとの一般的にかかるとされる金額は次のとおりです。

物件タイプ 諸費用の目安
新築マンション 物件価格の 約3~5%
新築一戸建て(建売) 物件価格の 約6~8%
中古マンション 物件価格の 約6~9%
中古一戸建て 物件価格の 約7~10%

中古の場合、仲介手数料(物件価格の3% + 6万円 + 消費税)がかかるため、新築よりも費用がかかるのが一般的です。
新築一戸建てについても不動産業者の仲介が入る場合があります。
また、マンションと戸建てでは登記費用や固定資産税などに差があります。
さらに、地域や物件規模によっても金額が変わる場合があります。

住宅ローンの“借りられる額”と“返せる額”は異なる

金融機関の住宅ローン融資額は、年間返済額を年収の30%を目安に計算するとよく言われています。
それは、お金を貸す側の視点から見た一般的な物差しです。

その金額と、あなた自身が長期間にわたって “無理なく返せる金額” は異なります。

私が、この “無理なく返せる金額” について相談された場合、次の計算式を参考に計算することを提案します。

住宅ローン返済額 + 住宅維持コスト = 世帯の可処分所得の25~30%

この「25~30%」はあくまで目安であり、実際は次の計算で具体的な計算を行い、各家計や経済事情を考慮して判断します。

実際に現在(賃貸時)の住宅費が毎月の手取りの何%を占めるかを計算して比較するのも参考になると思います。
ただし、この時に毎月の賃料とローン返済額の比較するのではないことに注意してください。
あくまでもこれまでの賃料が占める手取り額の割合と、ローン返済額 + 住宅維持コスト が手取り額に占める割合を比較します。

計算については、次の手順で行います。

① 可処分所得から考える

可処分所得は、年収から税金と社会保険料を差し引いた、言わば “手取り額” 、実際にあなたが使える金額です。

② ローン返済額を試算

念のため、変動金利・固定金利の両方でローン返済額を試算してみましょう。
複数の住宅ローン返済額を試算できる無料のWebサイトなどがあります。※1

③ 住宅維持コストを見積もる

年間に支払うのは、ローンの返済額ばかりではありません。
賃貸物件に住んでいた頃と違い、維持コストがかかります。

  • 管理費
  • 修繕積立金
  • 固定資産税
  • 火災保険料

管理費と修繕積立金はマンションの場合に該当しますが、戸建ても将来の修繕費は積み立てで準備することをおすすめします。

手取り額から、これらの差し引かれる金額がどのくらいかを具体的に計算してみてください。
そして、残りの金額で、毎日の生活費とこれから先の費用(教育費や老後資金、リフォーム資金など)を払っていけるかどうかを慎重に考えましょう。

(例)
年収600万円(手取り466万円 概算)の方の場合※2

 融資可能額: 年収 × 30% = 年間返済額180万円 → 月15万円返済
 返済可能額:手取り × 30% = 年間返済額140万円 → 月11.7万円返済

年収の30%である年間返済額180万円という金額は、可処分所得で占める割合は約39%に相当します。3割と思っていたのが、約4割へと変わります。
さらに、固定資産税、火災保険料、管理費、修繕積立金などを加算した場合、手取りの金額のうち、住宅費がどのくらい占めるかを計算してみてください。

1人で借りる?2人で借りる?

ご夫婦で住宅を持つことを考える方も多いと思いますが、住宅ローンを2人で一緒に返すことと、2人で借りることは違います。
2人で借りるとは、それぞれがローンの債務者としての返済義務を負うという意味です。

共働きでどちらも継続して安定した収入がある場合、ローンを借りることができる可能性は高いので、「2人で借りる」という選択肢があります。
最大のメリットは1人で借りるより多くの金額を借りられるということになります。

1人で借りる場合は、シンプルに家計負担の役割が明確となり、債務者とならない方の自由度が高まり、家計への柔軟な対応が可能になります。

あなたとあなたの配偶者にとって、今後の働き方への影響も大きい選択です。

1人で借りる場合と2人で借りる場合の概要比較

項目 1人で借りる 2人で借りる
借入可能額 少なめ 多め
購入できる物件 限られる 幅が広がる
家計 収入減少への耐性が比較的高い 共働き継続が前提になりやすい
育休・時短勤務 影響が小さい 影響を受けやすい
住宅ローン控除 1人分 それぞれ利用できる場合がある
団体信用生命保険 1人分 契約方法によって異なる
手続き シンプル やや複雑

《参考:1人で借りる + 連帯保証》

ローンの債務者としては1人であっても、たまに「連帯保証人」を求められるケースがあります。
連帯保証とは・・・
住宅ローンの債務者が返済できなくなった場合に、連帯保証人が残額の全額を肩代わりして返済する義務を負う制度です。
1人で借りようとしても借入額に対して十分な収入がない場合、収入力のある別の人を連帯保証人とすることを条件にローン契約を成立させるケースなどがあります

〇 2人で借りる場合

2人で借りると判断した場合、住宅ローン商品によってさまざまな借り方があると思いますが、代表的な借り方に「ペアローン」と「連帯債務」があります。

どちらも民間金融機関で取り扱っており、フラット35が全期間固定金利であるのに対し、ペアローンは変動金利など数種類の金利プランを選べる場合があります。

団体信用生命保険における違いは、大きなポイントになりますが、最近はペアローンでも1人に万一のことがあった際に双方のローンが消滅する「ペア団信」などを扱う金融機関も増えています。その分金利が上乗せされるケースが多いようなので、事前に確認するようにしましょう。

ペアローンと連帯債務(フラット35)の概要比較

項目 ペアローン 連帯債務(フラット35)
ローン契約 2本(夫と妻で1本ずつ別々に契約) 1本(主債務者と連帯債務者で1つの契約)
諸費用 多くなりやすい(契約が2本になるため、諸費用は高くなる傾向) 比較的抑えられる(契約は1本のため、事務手数料や印紙代は1件分で済む)
住宅ローン控除 夫婦とも対象になり得る(それぞれの持分と借入額に応じて最大化しやすい) 夫婦とも対象になり得る(負担割合に応じて分けて申請)
団体信用生命保険 原則、それぞれ加入(1人が亡くなっても、もう1人の債務は残る)
※最近は「ペア団信」によって、どちらか一方に万が一のことがあった場合、ローンの全額がゼロになる商品もあり。
機構団信・夫婦連生団信等の付保が可能(加入できる団信は商品によって異なる)
※夫婦連生団信の場合、どちらか一方に万が一のことがあった場合、ローンの全額がゼロになる。
金利 商品による 全期間固定

変動金利か、固定金利か

これから金利が下落すると思ったら変動金利、金利が上昇すると思ったら固定金利と言われていましたが、変動金利と固定金利の差によって返済額も異なるため、単純な判断は難しいと言えます。

現在、変動金利は固定金利より低く、年間返済額から導く借入総額を大きくすることが可能です。借入残高が大きい場合、金利が低い方が元本返済も進むというメリットもあります。
しかし、金利が上昇傾向にあるならば、実際に金利が上昇した場合の影響をシミュレーションし、金利上昇に家計が耐えられるか、家計を守るための備えができるか、その対策をあらかじめ行うことが重要です。

あなた自身の家計の今後を左右するかもしれません。複数のシナリオでのシミュレーションを行ってみてください。

変動金利と固定金利の概要比較

項目 変動金利 固定金利(全期間固定)
金利水準 低め 高め
金利の決定 定期的 あるいは随時 金利見直し 借入時に決定し、完済まで一定
返済額 金利に応じて返済額を見直す(商品による)
※5年ルール、125%ルールが適用される場合がある
返済額は完済まで一定
主な特徴 ・金利変動の影響を受ける
・当初の返済負担を抑えやすい
・固定よりも金利が低い場合は、元本返済が進みやすい
・将来の資金計画が見通しづらい
・金利変動の影響を受けない
・当初の間、変動金利より返済額が高くなる
・将来の資金計画が立てやすい
どんな人が向いてる? ・状況の変化に自分で柔軟に対応したい人
・借入額が比較的少ない/返済期間が短い人
・収入が安定して対応できる備えがある、または繰り上げ返済用の貯めがある人
・リモートや住み替えの可能性がある人
・状況の変化へコストを支払い安心したい人
・借入額が比較的大きい/返済期間が長い人
・家計の安定性を重視する人
・長く住み続ける予定の人

《参考:変動金利の5年ルール、125%ルールとは?》

〇 5年ルール

金利が変動しても、原則5年間、毎月の返済額は変わりません。返済額の内訳(元本と利息)が変わります。
(例)
通常時: 毎月の返済額 10万円 = 元本返済 8万円 + 利息 2万円
金利上昇時: 毎月の返済額 10万円 = 元本返済 6万円 + 利息 4万円

金利が上昇すると、返済額が変わらないため、利息支払い分が増える分、元本の減りが遅くなります。

〇 125%ルール

5年ルールの適用期間終了後、返済額の見直しを行う際に、上昇幅については125%を上限とするものです。
(例)
従来の毎月の返済額 10万円 → 次の5年間の毎月の返済額 12万5千円以内

このルールにより、過度に返済額が変わることを抑える効果があります。
しかし、返済額が抑えられることで元本の返済が予定どおり進まず、未払利息が生じる場合があります。
未払い利息とは、支払うべき利息を払い切れず、あとに持ち越される利息のことです。
未払利息や元本が返済期間中に解消できなければ、返済期限時に残債の一括返済が必要になる可能性があります。

金融機関によっては、5年ルール・125%ルールを適用しない変動金利住宅ローンもあります。その場合は、金利の見直しに応じて返済額も見直されます。

最後に

一生に一度のことだから、長く住むマイホームだから、そう思って理想の住まいを追求したい気持ちは誰しも同じです。
だから、住宅ローンを組む際、多くの人は「いかに安く借りるか」「どうすれば理想の家が買えるか」という目の前のことに囚われがちです。

住宅ローンは長い期間、仮に返済期間を35年とした場合、その期間中ずっと家計に影響を与えます。借りてしまえばなんとかなるというものではありません。

どういう家を手に入れるかと同時に考えるべきは、「これから35年続く人生のリスク(病気・減収・金利上昇・教育費のピークなど)にどう備え、最後まで家計を守り抜くか」という点にあります。

住宅購入はゴールではなく、新しい暮らしのスタートです。
これからの長い年月の中では、景気や金利の動きだけでなく、ご自身の働き方やご家族のライフステージも大きく変化することを踏まえて、あなたにふさわしい住宅ローンの組み方を考えてください。

「みんなが選んでいる住宅ローン」ではなく、あなたとあなたの家族が「これからの暮らしを安心して続けられる住宅ローン」を選ぶことが、結果としてあなたにふさわしい選択につながります。

※1 住宅金融支援機構 住宅ローンシミュレーション
https://www.jhf.go.jp/simulation_loan/

※2 手取り概算
単身・扶養家族なし・40歳未満・東京在住を前提とした税金・社会保険料を概算し算出(端数は四捨五入で記載)

※本記事は、2026年8月時点の法制度等および情報による内容です。今後変更となる可能性があります。

2026年8月5日

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