退職を経験したことのある方なら、一度は覚えがあるかもしれません。
退職して収入が減った頃に、思わず「え?」と声が出るような金額の住民税の納付書が届く──そんな出来事です。
そこで初めて、「住民税ってこういう仕組みだったのか」と気づく人は少なくありません。
そのときに十分な資金が手元にあれば問題ありませんが、もしなかったらどうなるでしょう。
人生の転機ともなる働き方が変わったときに、住民税は追いかけて、後からその存在感を主張します。
住民税の仕組みを理解し、先回りして万全の態勢で受け入れるために、今回は“住民税”について深掘りします。
住民税がわかりにくい理由
ここでは、会社員の方が住民税をわかりにくいと感じる主な理由を整理します。
① 所得税と住民税は「課税されるタイミング」が違う
・ 所得税:今年の収入に対して今年課税
・ 住民税:去年の収入に対して今年課税
この“1年のタイムラグ”こそが、退職後に起こる恐怖(?)の理由です。
退職時の所得税を納めて、やれやれと思っていたら、翌年に退職前の所得に基づく住民税を納める必要があるのです。
退職していなくても、収入の変動が大きい会社員の方にとっては、所得税と住民税とで支払額のズレを感じる原因でもあります。
② 所得税と住民税は「徴収方法」が違う
・ 所得税:毎月の給与から源泉徴収(即時)
・ 住民税:翌年の6月から天引き(特別徴収)
新入社員の頃に違和感を覚えることはありませんでしたか?
1年目は住民税の天引きがありません。
しかし2年目になると、前年の所得に基づく住民税の天引きが始まるため、「給料は上がったのに手取りが増えない」という現象が起こります。
③ 住民税の計算プロセスを体感しにくい
・ 所得税:年末調整で“調整している感”がある
・住民税:自治体が計算して会社に通知(会社は天引きするのみ)
給与明細を見ると、所得税は毎月の支給額に応じて変動するため、差し引かれる金額への感覚がつかみやすいです。
一方、住民税は、前年の所得を基準に自治体によって金額が決定し、固定された金額で毎月控除されるので、ピンとこない場合が多いのです。
住民税の基本構造
おさえておくべき住民税の仕組みを整理します。
① 住民税は何のため?
住んでいる都道府県・市町村に納める地方税です。
主に、その地域の公共施設、上下水道、ごみ処理、教育といった行政サービスの資金源となります。
その年の1月1日時点での住民票上の住所地に納めます。
② 課税は2本立て(所得割+均等割)
住民税は、所得※1に基づく「所得割」と定額負担となる「均等割」による税額の合計を納めます。
なお、他にも金融取引を行った場合、別途、住民税がかかる場合があります。※2
○ 所得割
前年の1月1日から12月31日までの所得に対して10%が課税されます。
内訳は、政令指定都市の場合は道府県民税が2%、市民税が8%、それ以外は道府県民税が4%、市町村民税が6%となります。
○ 均等割
約5,000円~6,000円程度です。「地域社会の会費」という性質から、所得に関係なく一定の金額となっています。
内訳は、一般的な例として、道府県民税が1,000円、市町村民税が3,000円、及び森林環境税1,000円(国税)となります。
均等割については自治体によって差がある場合があります。
なお、住民税には所得割・均等割それぞれに非課税となる基準がありますが、非課税となる条件や生活への影響については、後述の「住民税が生活に与える影響」の章で説明します。
③ 徴収方法は3パターン(給与・普通・年金)
住民税の徴収は6月から始まります。そのプロセスは3つに分けることができます。
○ 普通徴収(自営業者等)
市町村に直接税金を納める方法です。市町村から送られてきた「納税通知書」に従って納めます。
前年の所得によって決定された1年分の税額について、原則、4回に分けて納めます。それぞれに納付期限が定められており、1期(6月末)、2期(8月末)、3期(10月末)、4期(翌年1月末)となっています。
全額を一括で納めることもできます。
○ 特別徴収(会社員等)
給与の支払いをする会社などが、個人に代わって市町村に納税する方法です。
市町村から、各個人の前年の所得に基づく「特別徴収税額通知」が会社に送られます。会社は、その税額の1/12の金額を6月の給与より毎月天引きして、納税します。
○ 特別徴収(年金受給者)
偶数月に支給される公的年金から予め天引きされることで納税する方法です。
原則、次の方が対象です。遺族年金・障害年金は非課税のため対象外です。
・ その年の4月1日時点で65歳以上であること
・ 老齢基礎年金・老齢厚生年金・共済年金(旧制度)の合計受給額が18万円以上であること
前年の公的年金の年金額を基に、住民税を4月から6回に分けて、受け取る年金の支給額から天引きします。
4月、6月、8月の3回は仮徴収として、前年の住民税額を参考に天引きされ、10月、12月、2月の3回で本徴収として、本来の住民税決定額に基づいた金額に調整され天引きされます。
④ 主な控除について(所得税との違い)
住民税で適用される控除は次のとおりです。
基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、寡婦控除、障害者控除、ひとり親控除、勤労学生控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除(ふるさと納税を含む)、雑損控除など。
住民税は、ほぼ所得税と同じ控除が適用されますが、控除額が異なるものがあります。
主な控除について、所得税との違いを次の表にまとめます。

住民税と人生のイベント
住民税の構造(前年所得課税・6月年度開始・普通徴収/特別徴収)によって、人生のイベント時には、とまどうことがあるかもしれません。知っておきたいポイントを記載しました。
① 退職
住民税にとっての年度始まりは6月です。つまり、去年の所得に対する住民税は、今年の6月から翌年5月までの1年間で支払います。
この前提があるため、退職時期によって納付の方法が異なります。
○ 1月~5月退職
5月分までの天引き予定の住民税(前々年の所得に対する住民税の残り)は、退職時に一括徴収されます。よって、1月退職だと、5カ月分の住民税が差し引かれますので、手取りの減少に注意です。
そして、前年の所得に対する1年分の住民税は「普通徴収」になり、6月以降に自分で納付書に従って納付します。
《例》2026年3月に退職した場合
→ 2024年の所得分の住民税の残額(2026年4・5月分の給与天引き予定分)を退職時に一括徴収
→ 2025年の所得分の住民税は、2026年6月より納付
→ 2026年の所得分の住民税は、2027年6月より納付
○ 6月~12月退職
前年分の所得に対する残りの住民税(翌年5月分までの天引き予定分)は、原則として自分で納付書によって支払う「普通徴収」に切り替わります(本人が希望すれば、退職時に一括徴収も選択できます)。
《例》2025年9月に退職した場合
→ 天引きできなかった、2024年の所得分の住民税について、退職後に届く納付書に従って納付。
→ 2025年の所得分の住民税は、2026年6月より納付
いずれにせよ、退職後に住民税のための支払い余力を残しておくことが重要です。退職が決まったら、その後の生活の資金計画の中に忘れずに入れておきましょう。
② 転職
会社が変わったとしても、住民税の特別徴収について、自分で手続きすることはありません。
しかし、転職までの空白期間がある場合、また、退職してすぐに転職する場合であっても、前職から自治体へ、転職先から自治体へという情報伝達と手続きに時間がかかる場合があります。
次のようなケースが考えられます。
○ 1月から5月の間に退職してすぐに転職した場合
前職の退職時に、法律に基づき5月分までの住民税が給与等から一括徴収(精算)されています。1月から3月までの退職であれば、新年度(6月分〜)の天引きが転職先で始まるまで時間的な余裕があるため、手続きが間に合いやすく、問題になることは少ないです。
一方、4月・5月の退職だと、新年度(6月分〜)の発行・切り替え時期が目前に迫っているため、時間的な余裕が少なく、会社と自治体間の手続きが間に合わないことがあります。
○ 手続きが間に合わず、空白期間がある場合
通常の退職同様「納付書(普通徴収)」が届きます。その場合、既に転職先へ入社済みであれば、納付期限までに特別徴収(給与からの天引き)が始まるかどうか様子を見ることも現実的な判断です。
特別徴収されず、納付期限が来てしまう分については、未納(延滞金の対象)になるのを防ぐため、一度自分で支払う必要があります。
○ 「二重払い」になってしまった場合
万が一、自分で納付書を使って支払った直後に、転職先の給料からも同じ月分の住民税が天引きされてしまい「二重払い」の状態になることがあります。
その場合は、後日、自治体によって特別徴収の調整、あるいは還付の形で解消されます。
なお、前職から転職先へ書類(異動届出書)をバトンリレーしてもらうことで、住民税の天引きを途切れさせずに特別徴収の継続ができるケースがあります。ただし、これは「本人が希望し、かつ前職・転職先の双方が対応してくれる場合」に限るため、退職前に前職の担当者へ相談が必要です。
③ 副業
最近では、会社に勤務しながら副業をする人たちも少なくありません。働き方は多様化しています。その場合、副業に関する住民税はどうなるのでしょうか?
○ 本業も副業収入も給与所得の場合
住民税の特別徴収は、“主たる給与を支払う会社”が1社だけ行うという制度設計になっています。
したがって、本業の会社へ届く「住民税決定通知書」に主たる給与以外の合算所得として反映され、本業の給与から合算された住民税が特別徴収されます。
副業による収入を会社に知られてしまったという話を聞きますが、この仕組みのためです。
○ 本業は給与所得、副業収入が雑所得・事業所得の場合
確定申告の際に、給与所得以外の所得分の住民税の徴収方法について、「特別徴収」か「自分で納付」(普通徴収)を選択する欄があります。
普通徴収の場合、自治体の住民税の通知は自宅に届きますので、副業の所得分の住民税は自分で納めます。
○ 本業が事業所得・雑所得、副業が給与所得の場合
本業が自営業で副業がアルバイトの場合、住民税は原則として給与所得分は特別徴収になります。
ただし、自治体の判断で給与額に対して住民税が過大になる場合は普通徴収に回されるなど、自治体ごとに運用が異なる点には注意が必要です。
《補足》副業収入が20万円以下?
給与以外の所得が20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要となりますが、住民税の申告は20万円以下であっても、所得があれば申告が必要です。税務署への確定申告、または市町村への住民税申告を行います。
④ 結婚・扶養
結婚しても、住民税は夫婦それぞれの前年所得に基づいて個別に課税されます。
結婚後、配偶者の被扶養者となる場合は、次の点に留意しましょう。
○ 配偶者控除を含む扶養控除の判定時期
住民税の扶養控除(配偶者控除など)が適用されるかどうかは、「その年の12月31日時点」の状況で決まります。年の途中で結婚した場合でも、年末時点で扶養に入っていれば、扶養者(納税義務者)のその年(翌年課税分)の節税になります。
○ 被扶養者となる配偶者の所得要件※7
配偶者控除・配偶者特別控除の基準となる所得要件は、所得税と異なります。

なお、ふるさと納税を利用している場合、扶養家族が増えると控除限度額が変わります。家族構成が変わったタイミングで、寄付金額の見直しを忘れないようにしましょう。
⑤ 出産・育児
次の3点に留意しながら、出産前に資金計画を立てましょう。
○ 産休・育児休業中の住民税の支払い
産休・育休に入ると給与が支給されないため、住民税の天引き(特別徴収)ができなくなります。この扱いは退職時とほぼ同じです。
したがって、6月~12月までの間に産休・育休に入ると、その後自宅に届く納付書に従って、自分で前年所得に応じた住民税を支払います。
1月~5月の間の産休・育休入りは、最後の給与で5月分までの住民税が一括徴収されるので、注意が必要です。その後は上記と同様に、納付書に従って残りの住民税を納めます。
会社によっては、立替制度がある場合があります。これは、休業期間に天引きする予定の住民税を会社側が立て替えて納税し、復職後にその分を給与から引き去る制度です。会社の規定によって対応は異なるため、復職前に「いつから・何回で・いくら引かれるのか」を必ず確認しておくことが重要です。
○ 出産手当金・育児休業給付金は非課税
産休・育休中は、一般的に給与はありませんが、手当金を受けとることができます。これは非課税の給付金ですので、翌年の住民税は課税されません。
他にも、出産育児一時金、国や自治体でさまざまな出産・育児に関する支援給付についても、原則、非課税となっています。
○ 休業明けの住民税
1年から1年半程度の休業後に会社に復帰して勤務した場合、住民税は課税する所得が減っているため、天引きされない、または少額の天引きの期間があるはずです。しっかり働き出した翌年の6月からまた、しっかりと住民税の天引きが始まることを忘れないでください。
⑥ 引っ越し
自治体は、1月1日時点の居住者に対して、前年の所得に応じた住民税を当年分として年額を課税します。
別の市町村に引っ越ししても、その年の1月1日に住んでいた自治体(住民票の住所地)に納税します。
普通徴収で発行された住民税の納付書は、引っ越し後もそのまま使用します。年をまたぐ第4期分も、1月1日時点の自治体に納める点は変わりません。
⑦ 年金受給
前述したとおり、公的年金等の合計額が18万円以上の受給者を対象に、住民税はその年金から天引き(特別徴収)されます。
○ 年金の特別徴収のスタートは10月
例えば65歳になって年金受給が始まったとしても、すぐに住民税の天引きが始まるわけではありません。
受給開始の初年度については、天引きはありません。(もし、前年に所得があれば、6月以降納付書(普通徴収)で納付します。)
翌年、前年の公的年金受給額に応じた住民税について、6月(第1期分)と8月(第2期分)は年金に係る税額の半分を2回に分けて納付書で納めます。
その後、10月に支給される年金から特別徴収が開始されます。
○ 企業年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)は?
公的年金等となる、企業年金・個人型確定拠出年金については、公的年金、その他の所得とともに確定申告を行います(必要な場合)。この場合、公的年金以外の所得についての住民税は、普通徴収となり、納付書によって納税します。
年金から天引きされる特別徴収の対象は、あくまで、老齢基礎年金・老齢厚生年金・共済年金(旧制度)です。
○ 年金受給しながら給与所得がある場合
公的年金分は年金からの特別徴収、そして、給与所得分は支払う会社の給与からの特別徴収となります。
同じ「特別徴収」であっても、合算されることはありません。
⑧ 死亡
所得税については、「準確定申告」として、死亡日時点で所得税に関する清算がありますが、住民税にはその制度はありません。
住民税には次の原則があります。
・ 1月1日時点の居住者に課税
・ 前年の所得に対する納税額をその年に課税
したがって、前年に所得があって1月1日時点で存命であれば、その後に死亡した場合でも、その居住する自治体は、その年の6月に決定する前年の所得に応じた住民税を課税し、相続人が納付することになります。
また、公的年金の特別徴収は死亡した月の支給で終了し、未徴収分が普通徴収(納付書)で届きます。
例えば、2025年に所得があり、2025年中に亡くなった場合、翌年課税されるはずの住民税は、1月1日に居住していないため発生しません。
住民税が生活に与える影響
① 手取りへの影響
これまで説明してきたとおり、住民税は納税時期までにタイムラグがあります。
毎年、前年の所得の約10%程度の住民税の支払い額を納税するということを意識することが重要です。
② 住民税が基準になる社会制度
住民税は、多くの社会保障制度や公的サービスにおいて、「その世帯にどれくらい経済的な余裕があるか」を測るモノサシ(基準)として使われています。
○ 高額療養費制度(医療費の自己負担限度額)
病気やケガで医療費が高額になった際、1ヶ月の自己負担に上限を設ける制度です。この上限額が、住民税の課税状況(所得水準)によって細かく5〜6段階に分かれています。住民税非課税世帯だと、上限額が大幅に下がります。
○ 介護保険料や介護サービスの自己負担額
65歳以上が支払う「介護保険料」※8の基準額は、本人の住民税の状況によって段階的に決まります。また、デイサービスや特別養護老人ホームなどを利用した際の自己負担割合(1割〜3割)や、施設に入所した際の食費・部屋代の減免措置(負担軽減認定)も住民税が基準です。
○ 国民健康保険料
前年の所得(住民税の判定基準となる所得)が一定基準以下の場合、保険料の均等割・平等割が「7割・5割・2割」と自動的に減額されます。
○ 保育料
3歳未満児の保育料は、国の一律料金ではなく、「父母の住民税(所得割額)の合算」によって自治体ごとに細かく決まります。住民税が高ければ保育料も高くなります。
その他にも、後期高齢者医療制度や給付型奨学金が住民税の課税所得を基準にするなど、多くの社会制度が住民税と深く関わっています。
③ 非課税世帯とは?
住民税非課税世帯とは「家族(世帯)の全員が、住民税(所得割・均等割とも)を課せられていない世帯」のことを指します。1人でも住民税を払っている人がいれば、その世帯は対象になりません。
○ 非課税に該当する人
- 生活保護受給者
- 障害者、未成年者、ひとり親、寡婦(夫)で、前年の合計所得金額が135万円以下の人
- 前年所得について、自治体による最低の基準を下回る人
《例》
・ 単身世帯:合計所得金額45万円以下
・ 扶養あり世帯:扶養あり世帯:35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+21万円
○ 非課税世帯になったら?
医療・介護・保育・給付金など多くの制度で負担を軽減する仕組みがあります。
主な例をあげます。
- 医療費の自己負担限度額が大幅に下がる(高額療養費)
- 介護保険料が最も低い区分になる
- 国民健康保険料の均等割・平等割が7割〜2割軽減
- 保育料が0〜2歳は無償になる(3〜5歳はすべての世帯が無償)
- 給付型奨学金の対象になりやすい
- 臨時的な特別給付金の支給がある場合がある
最近、この非課税世帯の負担減を目的としての「世帯分離」という話を聞きます。
世帯分離とは、同じ住所に住んでいても、住民票上で「世帯」を別々に登録する手続きです。
しかし、住民票上の世帯を分けたからといって、自動的に住民税非課税世帯になるわけではありません。
また、別世帯としたことで扶養控除や各種制度の取扱いに影響が生じる場合もあります。家族の状況に照らし合わせて、慎重に考えることが重要です。
④ 住民税の地域差(自治体による違い)
住民税は地方税のため、自治体によって均等割の金額や減免制度に違いがあります。所得割は全国ほぼ共通ですが、均等割や独自の制度によって、同じ所得でも住む地域によって負担が変わることがあります。
所得割には違いはないので、どちらかというと、ほぼ同じ額の住民税は支払っているが、自治体によって受ける行政サービスが異なるという印象の方が強いかもしれません。
特に、均等割の非課税規定については、生活保護基準による級地区分に準じており、例示している非課税限度額の計算式の係数(35万円・10万円・21万円の部分)が自治体により変わります。
なぜ、住民税なのか
住民税が社会制度と深く関わっているということは前述したとおりですが、“所得税ではなく、住民税なのか”と思われた方がいるかもしれません。
社会制度に基づき、多くの行政サービスを提供しているのが自治体であるということが前提にあります。
そして、住民税には“世帯”という概念との結びつきがあります。自治体による把握で生計を一にする単位として、実態に近い形で社会制度を利用してもらうことができるのです。
また、住民税には「均等割」という、所得額に左右されない会費のような税金があります。「住民税が非課税(所得割・均等割とも課税されない状態)」という基準は、国や自治体にとって「本当に今、生活支援が必要な世帯」を見分けるための、最も信頼できるライン(モノサシ)になるのです。
身近な税でありながら、住民税は意外と知られていない点も多い制度です。
住民税がわかりにくい背景には、住民税は「自治体(総務省)」、所得税は「国税庁(財務省)」と管轄が分かれていることもあります。
所得税と並べて記載されることが多いものの、情報源が一元化されていないため、調べようとしても所得税の段階で力尽きてしまう、というのもよくある話です。
しかし、住民税の所得割は10%、これは単身の会社員でいうと、年収500万円の方に適用される所得税率10%と同じ重さです。
決して軽い税金ではありませんし、その使い道は、あなたが暮らす地域のサービスに直結しています。
住民税は、あなた自身の生活にもっとも近い税金のひとつです。
毎年、手元に届く「住民税決定通知」に目を通すところからはじめませんか?
人生のイベントが近づいてきたら、そのタイミングこそ、住民税について理解を深めるチャンスです。知っておくことで、将来の“思わぬ負担”を避けることにつながると思います。
《参考》ふるさと納税について
〇 ふるさと納税の「本来の役割」
自分が育った故郷や、応援したい自治体に税金を「寄附」という形で届けるための制度です。都市部に集中しがちな税収を地方に循環させる、という目的が根底にあります。
現在は返礼品が注目されがちですが、制度の本質は「自治体間の税収の再配分」です。
〇 住民税との仕組み(からくり)
「税金が安くなる(節税)」と思われがちですが、実際には “住民税の先払い” に近い仕組みです。
具体的に数字で見てみます。
【例】A市に住む人が、B市に50,000円を寄附した場合
① B市へ50,000円を寄附(返礼品を受け取る)
② 所得税の還付
所得税率:10%とすると
(50,000円 − 2,000円)×10% = 4,800円(所得税の還付)
③ 翌年の住民税で控除
所得税で控除しきれなかった残りが、住民税から差し引かれる。
(50,000円 − 2,000円) − 4,800円 = 43,200円(住民税の控除額)
④ 合計の控除額
所得税還付 4,800円 + 住民税控除 43,200円 = 48,000円
→ 寄附額 50,000円 > 控除額合計 48,000円
ふるさと納税は、「別の自治体に住民税を先に払って、2,000円で返礼品を受け取る制度」と理解すると、全体像がつかみやすくなります。
※1 所得
収入から必要経費等を差し引いた金額を指す。所得税法によって10種類(給与所得、事業所得など)に分類され、それぞれに定められた金額を差し引き(所得控除)、課税対象となる課税所得額を算出する。
※2 金融取引にかかる住民税(都道府県民税)
利子所得・配当所得・株式の譲渡所得などに対して課税される「利子割」「配当割」「株式等譲渡所得割」がある。これらは金融機関で源泉徴収されることが多く、確定申告をしない場合は、その源泉徴収で課税は終了する。一方で、確定申告を行うと、総合課税・申告分離課税の選択や損益通算などにより、住民税の計算方法が変わる場合がある。
※3 所得税の基礎控除
令和8年度(2026年)税制改正により、令和8・9年分については、所得に応じて、62万円~104万円が適用される。令和10年以後は、62万円・99万円が適用予定。
※4 ひとり親控除
令和8年(2026年)の所得に適用される控除額で記載。令和9年(2027年)の所得分より控除額が38万円(所得税)、33万円(住民税)へ改正が予定されている。※令和8年度(2026年)税制改正による
※5 生命保険料控除の旧制度と新制度
生命保険料控除制度は、平成24年(2012年)1月1日以降に契約した保険について、比較表記載の新制度としての上限額が適用される。それ以前の契約は、旧制度として、一般、個人年金それぞれ5万円が上限となる。新制度における介護医療の保険は、旧制度では一般に含まれる。
また、新・旧の契約を合算した場合の上限額は、合計で12万円となる。
※6 一般生命保険料控除(所得税)
子育て世帯への支援として、23歳未満の扶養親族を有する場合に適用限度が4万円から6万円に改正。令和8年(2026年)・9年(2027年)の時限措置。
※7 配偶者控除における配偶者の所得要件
令和8年度(2026年)税制改正により、所得税・住民税の給与所得控除が74万円に引き上げ。令和8年(2026年)・9年(2027年)の時限措置。住民税については、前年度所得への課税であるため、適用年度は、令和9年(2027年)・10年(2028年)となる。
※8 介護保険料
要介護状態となった高齢者が必要な介護サービスを受けられるよう、社会全体で支える目的で支払う保険料。65歳以上の第1号被保険者、40歳以上から65歳未満の第2号被保険者に分類される。第2号被保険者の介護保険料は、加入している健康保険制度(会社の社会保険や国民健康保険)によって算出され、健康保険料と共に支払う。
※本記事は、2026年6月時点の法制度等および情報による内容です。今後変更となる可能性があります。
2026年6月17日
